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[書評以前] フィラメント〜漆原友紀作品集〜

 あわい(間)の——

そう枕詞をつけて呼んでみたくなる蟲師で名高い漆原友紀の作品集である。

 そこでは、移ろうものと変わらぬものの話が静かに流れていく。生命と鉱物、少年の成長、そして人の生と死。変わり続ける私達と私達の側に居てくれて変わらぬもの、との共鳴がそこにある。どちらかがどちらかに対して押し付けたりすることは無く。
 これは現在アフタヌーンで連載中の蟲師にも引き継がれ、

それぞれが ただ あるがままに
と囁かれている。こちらは、最新刊が来月後半にでるので、その際に。

 絵柄は、今の方が好みだが、こちらも作風に馴染んでいて、悪く無い。

 収録されているどの作品も味わい深いが、最後に一つだけ。青年と、従兄弟の少年の話より。家庭の事情で塞ぎ込む少年のそばに青年が向かう。そこでの会話は読んで頂くとして、その背景で流れる詩がある。

かつて
世界がぼくたちの

知り得る限りが
全てだった頃——

世界は
自分の王国だった

自分には
どうしようもない事や

決して叶わない事が
ある事を
思い知ったのは
いつ頃だったか

それでも
歩き出したんだ

そう思わせてくれる
大好きな人達がいた

君にもそれが
いるように——

大丈夫

世界が肥大で
目がくらんだ時は


僕らがちゃんと
そばにいるよ

雪の冠〜white kingdom〜


 そして少年は立ち上がり、再び歩き始める。

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